『コーヒーカップの魚』は、幼い子どもと過ごした穏やかな午後を描いた作品です。舞台となるのは、木漏れ日が差し込む古い洋館の喫茶室。蓄音機から流れる音楽や、ケーキとコーヒーの香りが、ゆっくりとした時間を演出しています。
この作品の原点には、加藤久仁生監督によるアニメーション作品『或る旅人の日記』第二話「真夜中の珈琲屋」との出会いがあります。作品の中に登場する印象的なワンシーンに心を動かされ、「もしあの幻想的な世界観を、自分なら音楽で表現するとしたらどうなるだろう」という思いが、この楽曲の出発点になりました。
もちろん、本楽曲はその物語を音楽化したものではありません。作品から受け取った空気感や温もりを出発点としながら、親子の記憶というまったく新しい物語として描き直した、私自身のオマージュ作品です。
タイトルにもなっている「コーヒーカップの中から魚が跳ねるかもしれないね」という一節は、現実と空想が自然につながる子どもの世界を象徴しています。大人にとっては不思議な出来事でも、子どもにとっては、ごく当たり前の「魔法」です。
この曲で描きたかったのは、そんな想像力に満ちた時間そのものです。子どもの笑顔が何気ない午後をかけがえのない思い出へと変え、その時間は、大人になってから人生の宝物だったと気づく――そんな普遍的な感情を音楽に込めました。